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スズキファンが広がる未来へ。二輪事業の成長戦略に挑むスズキの新たな戦い。
スズキ株式会社
二輪事業本部長 常務役員 伊勢 敬
大学院修了後、スズキ株式会社に入社。四輪パワートレインの実験・評価、エンジン設計・開発に従事。四輪エンジン設計部長、四輪パワートレイン技術本部長を経て、2023年4月に品質保証本部長へ就任。2025年4月より現職。着任後は世界各国の販売店を自ら訪問し、二輪事業の現状認識と信頼回復を推進。縮小均衡から成長戦略へ舵を切り、「2030年までの成長戦略」を掲げてグローバル市場に挑む。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
失敗を糧に前進。四輪車の技術者から二輪事業の責任者へ。
私はスズキに入社して以来、長らく四輪車の実験業務、エンジンの開発・設計に携わってきました。振り返ると、本当にたくさんの失敗を重ねてきたものです。中には失敗という言葉では片付けられないような、大きな損失を出してしまったこともありました。
当時の鈴木修会長へ報告に行く際には、見かねた上司が一緒に来て、私をフォローしてくれました。そんなことが一度や二度ではなかったのですが、それでも強く叱責された記憶はほとんどありません。
むしろ前会長からは叱責ではなく、激励されることがほとんどでした。「成功するまで続ければ失敗にならない。若いうちはもっとチャレンジしろ」と。そんな言葉を何度もかけてもらいました。
中でも印象的だったのは「チャレンジして、競争と戦いの先にだけ、未来は開ける」という言葉です。苦しくても、一歩ずつでも必ず前進しよう。そう自分に誓った日のことを今も鮮明に覚えています。
そんな私が2025年に二輪事業本部長に着任しました。ただ正直に言えば、最初は不安だらけでした。事業本部長という立場は技術だけでは務まりません。営業も、企画も、経営判断も、すべてに責任を持たなければいけない。
私は長く技術畑を歩んできた人間ですから、足りないものが多かったんです。でも、その時に多くの役員や先輩方が支えてくれました。毎週末、私のために勉強会を開いてくれ、営業や経営のことを一つひとつ教えてくれたのです。本当に感謝しかありません。
スズキという会社は、「人を育てる会社」だと思っています。チャレンジする人を、しっかりと周りが支えてくれる文化があるのです。
我慢の時間を越えて。二輪事業の成長へ向けた第一歩。

二輪事業はしばらくの間、厳しい時期が続いていました。事業部の人員や予算を縮小し、生産縮小やレース撤退といった判断を重ねながら、営業利益を守る経営をしてきました。
もちろん、その判断が必要な時期だったことは間違いありません。ただ、長く縮小均衡が続いていたことで、言いたいことも言えず、組織全体が少し萎縮してしまっていた。私は、そこに強い危機感を持っていました。
技術者も営業担当者も、全員、本当はチャレンジし、成長したかったはずです。「もっと良いバイクを作りたいし、売りたい、価値をわかってもらいたい」「レースをやりたい、また宣伝したい」そんな想いをずっと持っている。
私自身が四輪技術の出身で、チャレンジし続けられていたので、その気持ちは痛いほど分かります。だから私は「できない」「仕方ない」で終わらせたくなかった。
利益も少しずつ出始めたタイミングだったので、私は「成長へ舵を切ろう」と決断します。二輪事業の成長戦略を掲げ、再びフルスロットルで走り出すことを決めました。この話をした際に現場の空気が一気に変わり、みんなの目の色が変わりました。
「再チャレンジしよう」そんな熱量を感じました。ただし、立ち上がるためには戦うための武器が不可欠です。お客様や販売店が満足し、選んでいただけるラインナップを揃え、世界中のお客様に製品を届けるための準備を急ぐ必要があります。
目前に迫った大きな危機。販売店の信頼を取り戻すために各国へ。
成長への転換を決心した頃、実はスズキの販売現場は大きな危機を迎えていました。さまざまな国で販売店の離脱が進んでいたのです。私たちが縮小均衡で対応している間に、市場は大きく変化していました。
海外では、40年もの間スズキの看板を掲げていた販売店の契約解消が起きていました。販売店の立場になって考えられていなかった結果、離脱という現実に直面し、そのとき初めて私たちは瀬戸際にいることを自覚しました。
いくら成長戦略を誓っても、製品とお客様をつなぐ販売店がなくなれば、元も子もありません。スズキのブランド力や世界中に広がる販売網は、諸先輩方が築いてくださった大切な資産です。
その資産を自分たちの時代で失ってしまうことは、到底許されません。私は日本を含めた世界各国の販売店へ出向き、この深刻な状況の打開を試みました。
「なぜ今まで何もしてくれなかったのか?」「多くの要望を伝えたが、回答もない」「代理店はよくやってくれるが、本社は何してる?」など、行く先々でのご指摘はもっともな内容でした。
販売店は商品が売れてこそ、メンテナンスなどアフターサービスによる収益を確保できます。それにも関わらず、売れる商品が店に不足している状況が続いていたのですから、その怒りは当然のことでしょう。
私はまず、これまでの対応を謝罪することから会話を始めました。地域によっては一触即発の雰囲気の中での話し合いです。謝罪を受け入れていただけたのは、まだスズキとの絆を信じていてくれたからだと改めて思いました。
これまでと違うことを示すために今後の計画も伝え、最後にさまざまな要望の一つひとつに真摯に耳を傾け、その貴重な意見を持ち帰りました。
あの時、訪問していなければ、私たちはスズキの資産であり生命線でもある販売網を失っていたかもしれません。
インドで生まれ始めた好循環。強みを活かし、成長を目指す。

私は、スズキの二輪の強みは大きく三つあると考えています。一つ目は、世界に広がる販売網を核とする「ビジネスモデル」。
二つ目は、ファンバイク・スポーツバイク・シリーズバイクそれぞれでブランド認知とファンの獲得を進めてきた、先輩たちが築いてくれた「イメージ戦略」。
三つ目が、個性的な製品を適正価格で提供できる「開発思想と技術・運営力」。この三つです。
スズキはただバイクを売る会社ではありません。移動する喜びや、乗る楽しさ、人生を豊かにする価値を届ける会社だと思っています。
お客様が満足し、販売店にとっても良いラインナップを揃え、適正価格で販売することは、スズキのファンを増やすことにつながります。製品を売るのではなく、価値を提供できれば必ず良い連鎖が生じます。
販売台数が伸び、利益が生まれ、その利益を次の開発投資へ回せる。こうした好循環が、すでにインドでは生まれ始めているのです。
スズキの四輪車はインドでトップシェアを獲得しています。販売台数が急速に伸びた当時、私は四輪の開発者としてその様子をまざまざと目にしました。いまの二輪車の伸び方は、あのときと非常によく似ています。
一方でその他の市場は、改善が必須の状況です。2030年までの成長戦略を掲げ、私たちの強みを活かした展開を進めているところです。まさに今、成長できるかどうかの分かれ道に立っているのです。
スズキであり続けるために。お客様にとって価値のあるモノづくり。
スズキでは社是の第一に、「お客様の立場になって、価値ある製品を作ろう」を掲げています。私はこの考え方こそがスズキの原点だと思っています。
この理念がなくなれば、スズキはスズキではなくなるでしょう。だからこそ私たちは、お客様のためのモノづくりを絶対にやめません。
顧客満足を高めることも、スズキのファンを増やしていくことも、すべてはお客様が求める製品を作ってこそ成り立つものだからです。
自動車・二輪産業は成熟領域でありながら、未だに成長を続ける産業です。形や性能、役割や技術、そしてアプローチの方法は時代とともに変わっていきますが、移動手段の恩恵を享受していない人々が世界にはまだまだたくさん存在します。
その方々に手段を提供し、移動の喜びを分かち合うために、お客様中心のモノづくりはこれからも変わりません。
世界中でチャレンジしたい人と、一緒に戦っていきたい。

今の二輪事業は、本当に面白いフェーズに入ってきました。縮小ではなく、成長へ向かうタイミング。しかも舞台は世界です。だから、世界を舞台に活躍したい、チャレンジしたい方は大歓迎です。
伸びしろの大きい二輪事業を成長させ、一緒に未来を切り拓いていきましょう。二輪事業本部には個人に裁量を委ねる文化があり、チャレンジできる環境があります。私は、もう一度世界中にスズキファンを増やしたい。
お客様のための製品づくりに企画から参画し、スズキの成長をかけて戦う私たちとともに成長してくれる仲間を待っています。