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組立家具トップメーカー。リスタートアップカンパニーとして、次代を共に築く。

株式会社白井産業
代表取締役社長 青柳 政美

更新日:2023年9月13日

大学卒業後に入社した完成車メーカー、その後の大手総合商社で管理業務全般に従事し、日本・米国等で管理会計を中心に財務会計、IR、国内・海外税務、資金調達、人事等を経験。その後、教育事業運営会社の管理部長を経て、光学機器メーカーの経営戦略本部でM&A、ベンチャー投資を推進。2016年、経営再建の実績を評価され債務超過状態であった白井産業に入社、取締役副社長に就任。財務健全化のため2017年に民事再生法を申請、翌2018年に新会社に健全な事業・資産を譲渡するいわゆる第二会社方式により事業再生を成功させる。就任以来、ランチェスター戦略を取り入れた商品戦略・販売戦略を立案・実行、業績改善を実現。従業員が働きやすい環境の整備にも注力し、経営再建を着実に進めている。2024年、代表取締役社長に就任。
※役職は2024年1月時点、記事内の内容は取材時点のものです。

2018年に再スタートを切った、組立家具のパイオニア。

白井産業の歴史は大正時代(1922年)に静岡県島田市に開設された木工所から始まり、1963年に株式会社白井産業が設立されました。2018年以降は新会社が歴史ある事業と社名を受け継いでいます。

旧会社は、最初は清涼飲料水の木製ケースの生産を手掛け、後に木製流し台の製造を行いました。これらで培った技術を生かして、1974年に組立家具の製造・販売を開始しました。まだ桐ダンスが婚礼家具の定番だった時代に、白井産業は組立家具のパイオニアとして新しい市場を創り出したのです。

その後、1990年から2000年にかけて組立家具市場は爆発的に成長します。核家族化による世帯数の増加、ライフスタイルの西欧化、さらにデフレが追い風となり、マーケットリーダーとして隆盛を極めました。しかし2000年代後半には円高の影響もあり海外から低価格品が流入、価格競争に巻き込まれます。

様々な施策も奏功せず、業績は悪化、民事再生法の申請を余儀なくされました。2018年に「第二会社方式」と呼ばれる方法を用い、新生・白井産業として新たにスタートを切りました。

復活できるという確信から経営に参画。

私は、総合商社に勤めていた頃から数多くの事業に触れ、立て直しや事業撤退、会社清算などにも携ってきました。その過程で、「事業再建が上手く行くかどうかは、その会社の事業に社会的役割があるかどうかにかかっている」との確信に至っています。

入社前、白井産業は重要な社会的な役割を担っている企業であると私には見えました。全盛期に100億円近くあった売上が40億円ほどにまで減少していましたが、この会社が手掛ける組立家具の供給という社会的な役割はまだまだ大きいと感じたのです。

家具の市場は意外と大きく、アパレル業界に匹敵する規模です。その中の一分野とは言えトップメーカーの地位を守っているのですから、立派なものです。自社の特長を生かした戦い方ができれば業績も回復可能であると考え、自分が力になれればという想いで経営陣として参画する決意をしました。2016年のことでした。

まずは従業員の安心確保から。出遅れていたEC販売にも着手。

最初に行ったのは、従業員を安心させることでした。「給料は減らしません」「最低保障のボーナスは必ず出します」「業績が良ければ、業績連動報酬を出します」という約束です。

後回しにされていた社内設備の改修などにも着手しました。業績が悪くなると、事業の縮小ばかりでなかく、必要な経費の削減、さらには減給などを実施するケースが多く見られますが、それでは社員の皆が前を向いて仕事をできるわけなどありません。

また、人事制度を修正しフェアでオープンな仕組みにして能力・貢献に応じた昇給を行いました。さらに会社業績を全社員に公開して、業績に合わせた報奨金の支給を始めました。

その結果、会社業績の改善とともに、従業員の定着率が大幅に改善しました。安心して仕事に打ち込み、生活できるようになったことも影響したのか、最近は新しい家族を迎える従業員も増加しています。経営者としてこんなに嬉しいことはありません。

事業面で注力したのはEC販売です。当時は自社ブランドの商品(NB)を販売していただいているお取引先様との関係を重視していたため、EC販売は積極的に進めていませんでした。しかし、旧来のお取引先様は毎年売上を減少させており、エンドユーザーの皆さんへ思ったように商品を届けられない状態にありました。

「自社EC販売を開始すると既存顧客との取引に悪影響を及ぼすのではないか」という意見もありましたが、「会社の将来のためには避けて通れない」という覚悟のもと、自社サイトでの販売をスタートさせました。

自社サイトでは、ユーザーとの関係作りを重視し、ユーザーの皆さんの声に耳を傾けるよう心掛けています。売上よりもユーザーとの関係を重視しようというスタンスで始めましたが、今では売上全体の30%に迫るほどに成長しました。この過程で培ったノウハウは、大手量販店向けのPB(プライベートブランド)商品の企画・製造へも生かされています。

特長を活かして勝負する。自社商品の経験をPB商品の競争力に。

白井産業の特長は、企画・設計・製造・販売までを自社で完結できる一貫体制です。この特長を活かして、自社ECサイトでの販売を通じて把握したユーザーニーズに沿って機敏かつ柔軟にNB商品や顧客のPB商品の開発を行なえることが私たちの強みになっています。

NB商品は、ユーザーがロイヤリティの高い白井産業のファンになっていただくことを目指しています。その意味で、市場の小さいニッチ商品の開発・販売も行っています。ニッチ商品は販売数が少ないだけでなく、開発工数の掛かるケースが多いのですが、他にない商品であれば価格競争に巻き込まれることもありません。

お客様から反応を頂き、それに基づいて商品を開発していけば必ず支持される商品になる。その共通認識のもとにEC販売と商品開発に取り組み、自社の特長(一貫体制)を強みとして活かせていると感じます。

ダイナミックに物事を進める「リスタートアップカンパニー」。

私は当社を「リスタートアップカンパニー」だと考えています。新会社でも、同じメンバー(人員削減はしていません)、同じ場所で、同じモノ(組立家具)を作っていますが、業績を改善することができました。この大きな理由の一つが、経営陣と従業員の距離を近くして経営の意思決定スピードを早くしたことにあります。この点では、当社はスタートアップカンパニーのように仕事の成果をダイレクトに感じられるスピード感、ダイナミックさも持っているという自信があります。

開発・設計に携わったメンバーにとって自分の手がけた商品が市場に出ることは何事にも代え難い喜びです。当社では、定期的に社内アイデアコンテストを実施しており、誰もがアイデアを実現するチャンスがあります。実際、社内の釣り愛好家の発案で生まれた釣り具収納家具『ペスカレージ』は、多くの釣り人から愛用されるヒット商品になりました。

「自分が開発した商品を店頭で子供に見せられることが何より嬉しい」と話すスタッフもいます。ファンの方々が当社の商品をYouTubeで紹介してくれることも珍しくありません。どれも大企業ではなかなか得られない経験ではないでしょうか。

特技や専門性を活かして、新たな変化の中心になってほしい。

2018年の再スタート以来、私たちは変化を続けています。企画の考え方や進め方、販売方法、社内制度など、中身はもう別の会社といっても良いでしょう。経営再建は順調に進み、翌2019年12月期は早くも黒字化を達成しました。2022年12月期のグループ連結売上高は48億円にまで回復、50億円に手が届くところまで来ています。

この再建プロセスは、新たに入社した方々の力なしには決してなし得なかったと思います。情報システムやECサイトなどのIT領域をはじめ、海外サプライヤーとのコミュニケーションなど専門性の高いノウハウを持った人材と出会うことの大切さを改めて実感しています。

今後も変化を重ねていくためには、各業務や部門を牽引していく人材が必要です。これから入社される方にはぜひ、知見や経験、得意分野を活かして、さらなる変化を生み出してほしいと考えています。

私は静岡生まれではありませんが、住んでみると本当に良いところだと感じます。Uターン希望の方はもちろん、静岡と縁のなかった方にも静岡で働くことを考えてほしいです。

編集後記

コンサルタント
内田 康太

経営再建によって見事な復活を遂げ、現在は順調な成長軌道に乗っている組立家具のトップメーカー「白井産業」。弊社が転職を支援させていただいた方も複数名ご入社され、会社の中枢で活躍されています。

私は社長の青柳様とは長らくお付き合いをさせていただいていますが、今回は改めて非常に貴重なお話を伺えました。インタビューの中で特に印象的だったことは、「全社員に安心して働いてほしい」という経営陣の想いでした。

その想いから経営状況を開示し、フェアでオープンな仕組みを導入、そして社員発案によるヒット商品も誕生しました。これはまさに「企業は人なり」の実践です。会社の立て直しを考えた際に、まず社員を第一優先されたことで会社が復興していったお話に非常に感銘を受けました。今後も組立家具の「SHIRAI」ブランドのさらなる発展が楽しみです。

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