フジ物産株式会社
西澤優希さん(仮名・事業責任者) 30歳
Uターンから2年で執行役員に。静岡で掴んだ新たなキャリア。
静岡高校を卒業後、筑波大学でスポーツビジネスを研究していた西澤さん。大学卒業後は東京の大手人材紹介会社に就職したものの、サッカーワールドカップのロシア大会を現地観戦したことで「スポーツに関わりたい」という気持ちが再燃。スポーツ関連の人材サービスを展開するスタートアップ企業に転職した。
その後、コロナ禍を経て地元の静岡へ戻りたいという想いが募るように。「静岡ではスポーツビジネスに関われる求人が少なく、希望する仕事は見つからないのでは」と思っていたが、リージョナルキャリア静岡のサポートで理想としていたキャリアを実現した。
東京からUターン転職し、わずか2年で執行役員に抜擢。「本当にいいタイミングで、希望領域の希少性が極めて高いポジションをご提案いただき、感謝しています」と語る西澤さんの転職活動について伺った。
※本記事の内容は、2024年12月取材時点の情報に基づき構成しています。
- 過去の
転職回数 - 1回
- 活動期間
- エントリーから内定まで60日間
転職前
- 業種
- 人材サービス(スタートアップ)
- 職種
- 事業責任者
- 業務内容
- スポーツ専門職の育成事業、スポーツ業界向けの転職支援、サッカー日本代表選手のサポートなど。
転職後
- 業種
- 人材サービス(新規事業)
- 職種
- 事業責任者・人事領域の執行役員
- 業務内容
- アスリートのセカンドキャリアサポート事業の責任者を務めると同時に、人事領域の執行役員として人事全般のマネジメントを担当。
ワールドカップを観戦して気づいた「スポーツに関わりたい」という想い。
現在のお仕事はどんな内容ですか?
私の勤務先は、静岡市清水区に本社を構える創業67年目の商社「フジ物産株式会社」です。弊社は石油製品の販売やマグロ漁船向けの餌の卸事業から始まりましたが、現在では遠洋マグロ漁船の支援(餌料販売)で国内トップシェアを誇る企業へと成長しました。
さらに、うなぎの養殖・加工・流通・販売、ガソリンスタンドの運営や再生可能エネルギーの販売、飲食店の経営、そしてチアリーダーのスクールなど、多岐にわたる事業を展開しています。
私は入社3年目で、現在、二つのミッションを担っています。一つ目は、2022年に新たに立ち上げられたアスリートのキャリアサポート事業「Ath-up(アサップ)」です。静岡はサッカーをはじめ、バスケットボール、ラグビー、野球、卓球など多くのプロスポーツチームが活躍する地域です。
いつか選手は引退する日がきますが、プロスポーツの世界は厳しく、その後のセカンドキャリアについて悩む方も少なくありません。私たちはそんなアスリートのキャリアを支援しており、キャリア教育やビジネス研修、就職支援を行っています。
アスリートのキャリアについての情報を発信する「NEVEROVER」というメディアを立ち上げ、現在は200名以上の利用者がいます。引退した選手や引退を考えている選手から相談を受けており、静岡県内の企業を中心に再就職を支援しています。
私のもう一つの役割はフジ物産の人事領域の執行役員としての業務で、人事全般のマネジメントを担当しています。この職務に就いて約4か月ですが、新卒・中途採用、社員向け研修、さらに社内の人事制度整備など、幅広い業務に取り組んでいます。
入社前のご経歴を教えてください。
静岡県静岡市に生まれ、幼い頃からサッカーが大好きで、スポーツのスペシャリストが集まる筑波大学の体育専門学群に進学して体育会蹴球部(サッカー部)に所属していました。
そこでスポーツコーチングやスポーツビジネスをはじめ、指導者として必要な知識やトレーニング方法、栄養学、さらにはサッカースタジアム経営などについて学びました。同級生の中には五輪やワールドカップに出場した者も複数います。
私はスポーツ以外のビジネス知識を深めたいと考え、新卒で東京の大手人材紹介会社に就職。求職者に寄り添い、企業のポジションをサーチする仕事に大きな魅力を感じていました。
しかし、2018年にロシアで開催されたFIFAワールドカップを現地観戦したことで、再び「スポーツに関わりたい」という想いが再燃します。機会に恵まれ、都内のスポーツに特化した人材サービスを展開するスタートアップ企業に転職しました。
そこでは、スポーツ業界を支える専属トレーナーや栄養士の育成事業に携わり、さらには、彼・彼女らをプロスポーツ選手やプロクラブと繋げる人材サービスの拡大に尽力。サッカー日本代表選手のサポートも担当しました。
転職のきっかけは?
きっかけとなったのはコロナ禍で、当時の在籍企業もオフィス出勤が停止となり、実家のある静岡に戻ってフルリモートで仕事を続けていました。そのうち、スポーツが盛んな静岡に大きな可能性を見出していたこともあって、「このまま生まれ育った静岡に住み、静岡のスポーツに貢献したい」と強く想うようになります。
近年、静岡ではスポーツ熱が一段と高まっています。清水エスパルス、ジュビロ磐田、藤枝MYFC、アスルクラロ沼津といったサッカーチームはもともと人気が高く、バスケットボールではベルテックス静岡がB2リーグに昇格して躍進しています。
さらに、プロ野球チーム「くふうハヤテベンチャーズ静岡」、ラグビーでは「静岡ブルーレヴズ」が立ち上がるなど、プロスポーツチーム全体が大いに盛り上がっています。
加えて、アリーナや新スタジアムなど新しいスポーツインフラ整備の検討が進み、スポーツ関連の仕事に携われる機会が広がっています。こうした環境の中、静岡でスポーツに関わる仕事に就けたら素晴らしいと思いました。
転職活動はどのように進めましたか?
静岡に特化した転職支援サービスであるリージョナルキャリア静岡(株式会社リンク・アンビション)にエントリーしたものの、静岡でスポーツビジネス関連の仕事が少ないことは理解していたため、正直なところ期待はあまりしていませんでした。
ところが、担当コンサルタントの内田さんから、「フジ物産という商社でアスリートのキャリアサポート事業を新規で立ち上げる計画があるので、社長とお会いしませんか?」と、まさに私が求めていた仕事の提案をいただきました。
内田さんは非常に丁寧に対応してくださり、やりとりもスピーディで進行がとてもスムーズでした。私も人材紹介会社で働いていましたが、内田さんは私のキャリアビジョンを的確に理解し、最適な選択肢を提案してくれて本当に心強かったです。
私が内田さんと出会う少し前に、フジ物産の社長がリージョナルキャリア静岡の原口社長に「アスリート支援事業の立ち上げに関する人材を探してほしい」と相談していたそうです。
採用企業の経営者から直接依頼を受け、ピンポイントで人材をリサーチするという、非常に難易度の高い人材ビジネスを展開しているリージョナルキャリア静岡の素晴らしさを実感しました。他の転職支援会社では今回の転職は実現しなかったかもしれません。
今の会社に決めたポイントは?
希望していた仕事内容に加え、社長の人柄が素晴らしいと感じたことが入社を決める大きな要因となりました。社長は非常にパワフルな女性でスピード感があり、アイデアも豊富で新しいことを次々と取り入れていきます。
そして、社員やお客さまなど関わるすべての人を大切にしています。Ath-upも、社長と親交のあったアスリートが突然戦力外通告を受けたことに心を痛め、次の活躍の場へ進むためのお手伝いができないかと考えたことが、事業を始めるきっかけでした。
また、社員の健康や働きやすさも非常に配慮されており、運動不足解消や健康づくりのためのトレーニングマシンを設置したり、リモートワークや業務効率化を支えるさまざまなITツールを導入したりしています。
さらに、フジ物産の基幹事業が好調で収益性が高いことも背中を押しました。私が携わるのは新規事業ですが、会社全体の業績が安定していることで新事業に取り組む際にもリソースやサポートが十分に行き渡りやすく、自分は全力で目の前の事業に集中できます。
目標は、地方におけるアスリートキャリア支援企業のロールモデルになること。
この仕事に関わる意義や事業にかける想いは?
私たちの事業における最も重要な意義は、スポーツを通じて社会を豊かにすることです。アスリートファーストであると同時に、スポーツ業界に関わる人やスポーツを楽しむすべての人々、そして普段は縁遠い人にも、スポーツの力を通じて価値を提供したいと考えています。
その手段の一つがアスリートキャリアサポートで、スポーツ選手が多くの分野で活躍できる手助けをしていきたいです。
一例を紹介すると、静岡市の伝統工芸体験施設「駿府の工房 匠宿」が生まれ変わり、その統括責任者は元清水エスパルスのキャプテンを務めた杉山浩太さんです。杉山さんは伝統工芸に興味を持たれ、施設の活性化に貢献しています。
杉山さんのような活動が広く認知されれば、サッカーにこれまであまり興味がなかった人々もスポーツやアスリートに対する関心がさらに高まるかもしれません。
杉山さんの転職は弊社のサポートではありませんが、素晴らしいキャリア事例だと考え、弊社メディアでもインタビューしました。このようなアスリートのキャリア成功事例を増やしていきたいです。
執行役員に昇格するまでの道のりは?
入社してから約2年が経った頃にHR(人事)担当の執行役員に任命されました。新しい執行役員制度が整備され、タイミングが良かったのだと思います。
入社時はまだ構想段階だったAth-upを立ち上げて事業を開始できた成果が評価され、今回の抜擢人事につながったのかもしれません。
人事の仕事に関しては、人材紹介会社や採用・研修の経験があったため、ある程度の知識は持っていました。しかし、一企業の人事責任者として全社の人事・採用統括は私にとって新たな挑戦です。
採用、研修、新たな仕組みづくりなど、取り組みは多岐にわたりますが、社員を大切にしながら執行役員としての業務を遂行していきます。
アスリート支援事業の展望について聞かせてください。
まずは、アスリートやスポーツ界に対してしっかりと価値提供をし続けること。そして、事業を継続して成長させていくために、収益を増やすことが重要だと考えています。認知度を高めてアスリートのサポート数をさらに増やし、一歩ずつ事業を拡大していきます。
また、アスリートのキャリアを支援するビジネスモデルは東京や大阪などの大都市ではすでに手がけている企業がありますが、それ以外のエリアにはまだ十分に浸透しているとはいえません。そこで、弊社が地方におけるアスリートキャリア支援企業のロールモデルになることを一つの目標としています。
静岡県に拠点を置くスポーツチームや大学との関係性を深め、他県で同様のビジネスが展開される際には弊社がそのお手本となるよう、この事業を発展させていきたいと考えています。
生活面での変化はありましたか?
やはり静岡は住みやすいです。まず、どこへでも車で移動できるのが便利で、現在は通勤も車で20分程度なのでストレスがありません。食事についても食材がとても新鮮で美味しく、飲食店のレパートリーが豊富で行きたいお店リストを作っていますが、なかなか制覇できません(笑)。
また、東京に比べて朝型の生活がしやすいと感じています。東京にいた頃は朝の9時半に出社し、夜の21時まで仕事をしていましたが、それでもサッカーがしたくて22時くらいからプレイしていました(笑)。
今は朝8時半に出社し、退社は定時の夕方17時半頃になる日もあります。残業があっても、夕食はほとんど自宅で楽しめるので、とても嬉しいです。以前より休みも増えたため、趣味のサッカーを楽しむ時間も増えて生活が充実しています。
Uターンを考えている人にアドバイスをお願いします。
静岡へUターンするのは面白いですよ。企業規模を問わず、魅力的なポジションが存在していて、特に首都圏などで働いた経験、中でもデジタル関係の知識は静岡の企業で活かせる場面が多いと思います。
安定した売上を生み出す基盤となる事業を持ちながら、新規事業を展開したいと考える企業は多いですが、「手法がわからない」「適切な人材が不足している」といった課題を抱えているかもしれません。だからこそ、Uターン人材はこれまでの知識や経験を活かす機会が豊富にあります。
静岡は生活面でも非常に快適です。車移動がメインで通勤も楽ですし、美味しい料理が楽しめて、家賃も比較的リーズナブル。そして、気候も穏やかで住みやすい環境が整っています。静岡での心豊かな生活は、ぜひおすすめしたいです。