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現場のリアルが世界の未来へ。独自技術で挑むインフラメンテナンスの変革。

株式会社トヨコー
代表取締役CEO 豊澤 一晃

更新日:2026年7月01日

1976年生まれ、静岡県静岡市出身。デザイン業界でのキャリアを経て、2003年に株式会社トヨコーへ参画。現場の課題解決に特化した事業開発を主導し、2006年に独自の屋根改修技術「SOSEI工法」を確立。全国展開への足がかりを作る。2008年、光産業創成大学院大学で、老朽化した屋外構造物の錆(さび)・塗装膜をレーザーで除去する「CoolLaser(クーレーザー)」の共同開発を開始。2014年に代表取締役に就任して以降、技術開発と並行してJIS規格の制定など業界のルールメイキングに奔走。15年の歳月を経て2023年に市販化を実現し、2025年に東証グロース市場上場を果たす。「キレイに、未来へ」をミッションに掲げ、日本発のディープテックとしてグローバル展開を見据えた指揮を執る。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

世界のルールを書き換える。社会課題に挑むディープテック企業。

トヨコーはインフラメンテナンス領域において「キレイに、未来へ」をミッションに掲げ、地球環境にも作業者にも優しい未来の技術を開発する企業です。私たちが挑むのは、高度経済成長期に整備され、いま一斉に老朽化を迎えている社会インフラの維持管理という、国家レベルの巨大な社会課題です。

「CoolLaser事業」では、橋梁・鉄塔・発電設備など屋外構造物の錆や有害塗膜をレーザーで除去する画期的な装置の開発・製造・販売を行っています。

従来、工事現場で行われているサンドブラスト工法(圧縮空気を利用して砂などの研磨材を対象物の表面に高速で吹き付ける表面加工技術)や、ケレン作業(塗料の密着性を高めるために表面の錆や汚れを落とす作業)は大量の粉塵や廃棄物の発生が避けられませんでした。

これに対して当社は、光の力で錆を蒸発させ、環境負荷と作業者への負担を極限まで減らす独自技術を開発(日米で特許取得)。施工スピードや屋外での安全性の壁をクリアし、これまで誰も成し得なかった「レーザーによるインフラメンテナンス」という新たな市場を牽引しています。

また、もう一つの柱である「SOSEI(蘇生)事業」では、工場や倉庫の老朽化した屋根に特殊樹脂をスプレーコーティングし、防水・断熱・補強を実現する独自技術「SOSEI工法」を展開。確固たる収益基盤を築いています。

家業で抱いた違和感。過去の延長ではなく「未来からの逆算」へ。

2003年、私は知人と創業した東京のデザイン会社を離れて静岡に戻り、父が営む塗装会社に入社しました。当時は大手自動車メーカーの工場塗床工事などを手がけており、社員2名の小さな規模ながら家族経営はとても安定していました。

しかし、私は入社早々に強い戸惑いを覚えました。前職のデザイン業界は、常に半年〜1年先の未来を見据えて新しい価値を創造する仕事。

一方、塗装の現場は「メーカーが決めた材料と工法を、過去の延長線上で実直に塗る」という世界だったからです。変化の少ない現場や業界の慣習に、私はどうしても馴染めませんでした。

それでも毎日現場に立っていると、さまざまな施工課題が見えてきます。「課題の一番近くにいる自分たちこそが、新しい材料や工法を研究し、自ら解決策を生み出すべきではないか」。その気づきが、現在のトヨコーの原点となりました。

「戦い方」を変えて生んだSOSEI工法が次なる挑戦の原動力に。

最初に取り組んだのは、お客様の悩みから着想を得た、工場の老朽化屋根を修繕する「SOSEI工法」の開発でした。この事業のブレイクスルーは「戦う相手」を変えたことにあります。私たちは競合を「同業の塗装業者」ではなく、「高額な金属カバー工法」に設定しました。

特殊な樹脂を吹き付けるSOSEI工法は、金属カバー工法よりも低コストで、建物への荷重負荷もありません。これにより、「塗装より高く、金属カバー工法より安い」という圧倒的なブルーオーシャンを切り拓くことに成功したのです。

全国から注文が殺到し、高い利益率を誇る事業へと成長したSOSEI。実はこの事業の大成功があったからこそ、私たちはその後、莫大な資金と歳月を要する「CoolLaser」という未知の開発へ、すべての利益を注ぎ込む覚悟を決めたのです。

「死の谷」を越え、執念で掴んだレーザー装置とルールメイキング。

SOSEI事業が順調だった2007年、アメリカで橋梁が崩落したニュースを目にしました。原因は錆。これは近い将来の日本の姿だと直感した私は、錆除去の抜本的解決策として「光エネルギーであるレーザー」に着目します。光産業創成大学院大学へ入学し、2008年から大学の先生方と共同開発に乗り出しました。

しかし、ここからが本当の苦闘の始まりでした。開発期間は実に15年。特にレーザー装置の第1世代「3kW機」が完成した際、性能は良くても現場が求める施工スピードに届かず、製品化へ向けた開発資金10億円が尽きかける、文字通りの「死の谷」を経験しました。

周囲からは「これ以上の投資は無謀だ」と言われ、資金が枯渇してしまう恐怖とも戦いました。それでも、この技術がなければ日本のインフラは守れないという確信と執念だけで、SOSEI事業の利益をすべて投入し、開発を継続したのです。

2023年、ついに市販モデル「G19-6000」の販売にたどり着き、私たちはようやくスタート地点に立ちました。私たちは装置を開発するだけでなく、JIS規格の制定や一般社団法人レーザー施工研究会を立ち上げ、安全ガイドラインの策定、取扱資格制度の創設まで行いました。

単なるメーカーではなく、市場の「ルールメイカー」になること。それこそが、安全で本質的な課題解決を世界に普及させるために不可欠な、私たちの最大の強みです。

「手触り感」と「誇り」。未完成の組織で、新ビジネスを創る。

トヨコーのカルチャーの核心は「本質に向き合う」ことです。私たちの開発現場では、技術者たちの品質基準が私(社長)よりも厳しく、なかなかOKを出してくれないのが日常茶飯事です。自らを律し(自律)、課題に対して嘘をつかない(誠実)、そんな職人気質のエンジニアが集まっています。

現在、トヨコーの開発チームには、大手メーカーで精密機械、半導体、産業用ロボットなどを手がけてきた凄腕のエンジニアたちが、それぞれのバックグラウンドを活かして活躍しています。

彼らがなぜ、あえてトヨコーを選んだのか。それは、大手企業の決められたレールの上を走る仕事ではなく、「レールそのものを設計し、敷いていく」面白さがあるからです。

そして何より、画面の中のシミュレーションだけで終わらず、自分の作ったレーザーヘッドによって巨大な橋や建造物が実際に蘇るという、エンジニアとしての本能的な「手触り感」と「誇り」があるからです。

誰も正解を知らない未知の領域だからこそ、手取り足取り教える環境はありません。しかし、大きな裁量を持って、まだ世の中にない新しいビジネスを自分の手で創り出す興奮は、ここでしか味わえない特権です。

ファーストペンギンとして世界へ。最も面白い「第2の創業期」。

私たちはどんなときも、リスクを恐れず最初に海へ飛び込む「ファーストペンギン」でありたいと考えています。二番手のほうが失敗のリスクは低いかもしれません。しかし、二番手は課題から遠い場所にいるため、本質的なルールメイキングはできないのです。

CoolLaser事業は今、第1世代から第2世代(6kW機など)への移行、そしてロボット化やAI・データ解析との連携という、まさに「第2の創業期」とも言える爆発的な進化のフェーズに突入しています。

2040年には国内の道路橋の約7割以上が建設後50年を経過し、このインフラ老朽化はアメリカをはじめ世界各国が抱える共通の課題です。私たちがリードしようとしている市場は、それほどまでに広大です。

完成された組織に入るのではなく、世界基準となる製品や組織の「スタンダード」を一緒に作れるチャンスは今しかありません。

「自分の技術で、世界のインフラの未来を書き換えてやる」という気概を持った開発エンジニアの方はもちろん、会社をともに成長させていくセールス部門、コーポレート部門の方も、この希少な挑戦の舞台に、ぜひあなたの人生を賭けてみてください。

私たちと共に、まだ誰も見たことのない未来の市場を創り出しましょう。この挑戦に共感していただける新しい仲間の参画を心から楽しみにしています。

編集後記

コンサルタント
溝口 拓

2025年の上場を経て、社会インフラを支えるディープテック企業として注目を集め、期待が寄せられているトヨコー。弊社からもCoolLaser事業部門やコーポレート部門へ複数の方の入社をご支援し、現在も共に歩みを進めています。

今回、豊澤社長のインタビューで最も心に残ったのは、あらゆる課題の「本質に向き合う」という姿勢です。世界のインフラ老朽化、過酷な建設現場という大きな問題に対し、目を背けず「本気で未来を変える」と語る社長。

気さくなお人柄の奥にある圧倒的な熱量に触れ、社長や社員の皆さまがゼロから新しいビジネスを創り出していく純粋な面白さを、私自身も肌で感じることができました。

UAE企業への納入も決まるなど、日本から世界へとすでに広がり始めているトヨコーの挑戦。社会を本質から変えていく同社のこれからの成長が本当に楽しみです。

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