地域に活力を生み出す教育の力。全12校の総合力で静岡の未来を切り拓く。
学校法人 静岡理工科大学
理事長 杉浦 哲
1951年、東京都生まれ。父の仕事の都合で幼少期に静岡市へ移住。静岡県立静岡高等学校卒業後、東京大学法学部に進学。1975年、日本郵船株式会社に入社。船舶オペレーションや営業、海外勤務、コーポレート部門など幅広い業務を経験。M&Aやグループ企業再編など多くの国際プロジェクトを手がけ、訪問国は60カ国以上におよぶ。2008年に同社代表取締役副社長就任。2010年には新和海運株式会社(現:NSユナイテッド海運株式会社)代表取締役社長に就任し、当時業界4位の海運会社社長として会社の合併を実行。2017年、日本船主責任相互保険組合理事長に就任。2021年10月、学校法人静岡理工科大学理事・評議員就任。同法人副理事長を経て、2022年6月より現職。これからの教育機関のあるべき姿を見据え、グループの挑戦を牽引している。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
静岡県唯一の理工系総合大学を中核に、全12校を展開する総合学園。
静岡理工科大学グループは、静岡県唯一の理工系総合大学「静岡理工科大学(SIST)」を中核に、中学・高校、専門学校、日本語学校、大学院を含む12のグループ校を擁する総合学園です。
その歴史は、1940年に設立された前身となる静岡県自動車学校にまで遡り、2025年に85周年を迎えます。建学の精神は「技術者の育成をもって地域社会に貢献する」こと。静岡理工科大学は1991年の開学以来、1万人以上の技術者・研究者を輩出してきました。
また、「総合力と多様な教育で、心躍る未来を。」という2030年に向けたグループビジョンのもと、地域社会の発展に貢献し続ける教育機関を目指し、さまざまなことに挑戦しています。
50年ぶりのUターン。未経験の教育業界へ。
東京で生まれた私が静岡に来たのは、幼少期の頃。父の仕事の関係でこの地に移り住み、高校卒業まで過ごしました。大学進学とともに上京し、海上輸送を中心とした総合物流企業に就職。その後も系列会社や海運関係の団体などグローバルビジネスの世界に長年身を置き、気づけば60カ国以上を渡り歩いていました。
そんな私が静岡に再び戻ることになったのは、70歳を目前に控えた頃。そろそろキャリアの手仕舞いをしようとしていたときに、思いもよらないご縁をいただいたのです。学校運営はこれまでのキャリアとはまったく異なる業種。無縁だった教育業界の仕事で静岡へ戻ることになるとは、想像もしていませんでした。
しかし、これも何かの運命かもしれない。そんな想いとともに、「恐らく人生最後となるであろう仕事で、育った街の役に立てるなら」と下した決断です。上京から50年目のUターンでした。
理事長就任後にみえた課題。自然淘汰の時代に生き残るために。
初めての教育業界で感じたのは、民間企業とのさまざまな違いです。特に教育機関の運営には法律で定められた制約が多く、民間企業のようにすぐに変えられない仕組みも少なくありません。より良い学校経営のために必要な改革を進めたいと思っても、そう簡単ではないのです。
一方で、教職員のみなさんは非常に真面目に仕事に取り組んでおり、誰もが教育活動に真摯に向き合っていて熱意も高い。その姿勢には感銘を受けました。それにも関わらず経営的な観点からは、現状維持を続ければいずれ学校運営は厳しくなることが避けられない状況でした。
人口が増加して教育が広く行きわたった時代は、教育業界はある意味“成長産業“でした。その間に教育機関の数は膨らみ続け、人口減少とともに自然淘汰が進んでいます。そうした中でどのようにして存続し続けるのか。これは地方にある学校のほとんどが抱える課題でしょう。
当学園もどんな強みを武器に生き残り、社会からどう評価される学校であるのか(=学校としての生きざま)を明確にする必要があったのです。
静岡理工科大学グループは県内に12の個性ある学校があり、中高専門学校、そして大学教育までカバーしている総合力は大きな強みです。総合学園としてのブランド力を高め、その総合力で地域社会へ貢献できることを見える形にすることが重要だと私は考えました。
その答えのひとつが、当学園と地域の未来を切り拓くためのプロジェクト。地域の人々が行き交う静岡駅前への、新たなランドマークの開設でした。
静岡の中心地に誕生。地域と教育をつなぐ新たなランドマーク。
2024年4月、県庁所在地の中心地に「SISTグループ静岡駅前キャンパス」を開設しました。新しいキャンパスには、県下最大級の9学科となった静岡デザイン専門学校と静岡理工科大学のサテライト研究室に加え、SISTコラボスクエア(地域協働センター)を設置しています。
SISTコラボスクエアは、地域連携、産官学連携、社会人向け教育を推進し、地域と教育をつなぐ拠点です。グループ各校と地域の接点であり、情報発信を行う場としても機能します。
中でも特に力を入れる「SISTビジネスアカデミー」では、経営改革やリカレント・リスキリングをテーマとした講座を開講。私たちが得意とする技術領域の「DX推進のためのデジタル人材養成講座」や、静岡の一流経営者から“生きた経営”を学ぶ、経営者・後継者向けの「エグゼクティブ講座」などを通じて、県内企業の多くを占める中小企業が社会の変革に沿って生き延び、次世代に向けてブレークスルーを果たせるよう支援します。
当学園が一体となって動きだす新たなランドマークで、これまで培った研究と人材育成のノウハウを惜しみなく提供し、持続的な発展につながる支援に今後も一層力を入れていく考えです。静岡理工科大学グループは、単なる学校運営にとどまらず、教育や学びを通じて地域の産業を支え、社会課題を解決する役割を担おうとしています。
地域とともに担う役割。静岡の未来を切り拓く力になる。
地域の発展には行政と企業の取り組みが不可欠ですが、教育機関にもできることがあるはずです。当学園の卒業生の就職率はほぼ100%。大学卒業生の約80%が県内企業に就職しており、専門学校はそれ以上です。
「学びたい」「子どもに学ばせたい」と思える学校があり、就職先もあれば、静岡に住みたいと思う人を増やせるのではないでしょうか。人が増え、街の魅力が高まれば、静岡に戻りたい人も増やせるかもしれません。私たち教育機関が担える役割は、決して小さくないのです。
その役割を担うためには、当学園が魅力ある教育機関として時代に合わせて変化していくことが欠かせないでしょう。そして、前向きな変化を起こし活力をもたらしてくれる新しい人材も必要です。
教育機関ならではの働きがい。業界未経験者も多数活躍中。
当学園は採用に対して柔軟性が高く、教育業界での経験の有無に関わらず採用を行っています。実際に専門学校には元エンジニアの教員が在籍し、大学では民間企業の研究者だった方が教員として活躍しています。
職員にも異業界・異職種出身で活躍してきた方が多数いますが、教育機関での働きがいや仕事を通じた社会貢献に魅力を感じて入職するケースが少なくありません。
私は教員と職員それぞれに異なる期待をしています。教員には教育の質を高め、さらに自身の思い入れのある研究を深め、学生生徒の育成・成長に情熱をもって取り組んでほしい。地域に貢献する魅力ある研究が社会に評価され、それが新たな人材を呼び込むきっかけになれば嬉しいですね。
一方で職員には、教員をリードし先頭に立ってこれからの時代に即した学校運営に取り組んでほしいと考えています。必要なのは、社会が求めるものを敏感に察知し、学校教育に反映させるための取り組みを一つずつ学校の中で進められる人材。教育の質を高めるサポートをしながら、経営合理性のある学校運営を推進する。その両輪を動かす役割を面白いと感じられる方にお会いしたいです。
教育業界は変化の少ない業界と思われがちですが、少子化時代の今こそ、大きな変革が求められています。教育は社会を変える力を持っています。だからこそ、異業界の経験を持つ人材が新しい風を吹き込むことも重要なのです。
教育機関は単に知識を教える場所ではなく、社会の変化に対応し、地域社会の未来を創る場所であると思っています。あなたの経験をぜひ、当学園で活かしてください。