感謝と絆が生まれる場所で、人と人をつなぎ続ける。
あいネットグループ
代表取締役社長 杉山 茂之
1968年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、ホテル、会計事務所を経て1993年、あいネットグループ入社。結婚式場責任者などを歴任後、2005年9月に同社取締役副社長に就任。創立50周年を迎えた2010年9月、代表取締役社長に就任し、現在に至る。
※所属・役職等は取材時点のものとなります。
偶然の出会いが生んだ、世の中に必要とされる事業
当社は、1960年に私の祖父が48歳のときに創業した会社です。旅先での偶然の出会いから「互助会」の存在を知り、その理念に共感。これからの世の中に必要とされる事業だと確信した祖父は、当時営んでいた桐下駄業を畳んで、冠婚葬祭業の世界に飛び込みました。
「仕事に誇りがもてる会社にしたい」。危機感から芽生えた決意
私は中学生の頃から10年間ラグビー漬けの日々を過ごし、大学卒業後は老舗ホテルと会計事務所で経験を積みました。25歳で当社に入社する際に想い描いていたのは、社員が自分の仕事に誇りを持つ、チームワークの良い組織。そんな会社をイメージしていました。
ところが父の経営する会社は、完全実力主義。同じ会社でありながら事業部同士で争い、横のつながりは一切ありません。トップダウンで方針が決まることにも、社員は慣れきっていました。理想とは正反対の会社だったんです。
確かに、右肩上がりで成長している時代はそれでよかったと思います。しかし、この先時代の変化とともにマーケットには必ず変化が訪れるはず。事業部単位ではなく会社が一丸となって戦う必要があり、そのためには社員一人ひとりが自ら行動できるようにならなくてはいけないと感じました。
この時、「社員が自分の仕事や会社に誇りをもてる企業にしたい」という強い思いが芽生え、自分が環境を変えていこうと決意しました。
成果とともに得た自信。2つの方向性が生んだ、会社の混乱
30代では、三重や静岡の結婚式場で責任者を経験しました。既存会場の取り壊しと新しい式場の建設、顧客ターゲットと戦略の転換などを実行し、担当会場の売上を大きく伸ばすことに成功。土地の購入、社員の採用、会場運営など多くを経験しましたが、中でも社員と一緒に成果を出せたことが大きな収穫だったと思います。
社員から自発的な動きを感じるようにもなりました。自分のやり方に自信を持った私は、父の方針をさらに否定し、ことあるごとに衝突。そのうち会社には、父と私2つの方向性が生まれ、自分では気付かない間に社員を混乱させていたんです。
社長就任で気づいた「感謝」と「絆」
転機は、42歳。父が創立50周年を期に社長交代を宣言し、私が社長に就任することになったときです。ある幹部社員から、父との関係について「このままではいけない」と助言を受けました。
社長と会長がまったく違う方向を向いていては、会社が向かうべき方向を社員に示せないし、会社は絶対に良い方向に進んでいかないからです。 私は社長就任にあたって猛省し、会社を経営する意義と目的を真剣に考えました。「なぜ結婚式、葬儀を行うのか」という根本に立ち返ってみたのです。
私たちは周りの人に支えられて生きていますが、社会が豊かになったことで価値観も多様化し、昔と比べて人間関係は希薄になっています。しかし、そんな時代だからこそ、周りの人に感謝する機会、人と人との絆を深める場が必要であり、それこそ結婚式や葬儀を行う当社の存在意義だと確信しました。
そして、私自身の使命を再確認したとき、一番身近な関係において、感謝の心や絆を大切にしていなかったことに気付いたんです。それまでの私は、会社をよくしたいという強い想いから父に対抗していると思っていました。しかし、実は信頼関係を築く努力を怠り、相手を否定することで自分の正しさを証明しようとしていたのかもしれません。
本当に会社を良くしたいのであれば、社員が同じ方向を目指せる環境を作ることが必要です。その重要性を改めて認識したことで、徐々に父との関係を改善することができました。
組織をひとつにする、理念とフィロソフィ
社長になったとき、自分の中に掲げたのは「つなぐ」というコンセプトです。これまでバラバラだった組織をひとつにし、組織力を最大化させるために、組織改革に取り組みました。最初に行ったのは、みんながひとつになるために、理念とフィロソフィを考えること。
私は、会社には価値観が必要だと考えています。価値観を社員みんなが共有していれば、どこで誰が意思決定をしても判断基準がブレることはありません。また、社員個人の価値観と会社の価値観がリンクすれば、長く働きたいと思える環境にもなるはずです。その価値観がまさにフィロソフィですが、社員同士をつなぐためには、私や役員が考えた価値観を押し付けるのではなく、社員からも意見を聞くことが必要でした。
そこで、時間をかけてでも一人ひとりに伝えたいと思い、当時約600名の社員を5~6人のグループに分け、その輪に入って話す時間を作ったんです。中には厳しい声もありましたが、それまで理念や価値観もなかった会社でしたから、変化への戸惑いや不安を感じた社員も少なくなかったと思います。
そうして1年半ほどかけて「全従業員の物質両面の幸せを追求するとともに、人と人とのつながりを大切にした心豊かな社会の実現に貢献する」という理念と、28項目のフィロソフィが正式に決まりました。
M&Aをしたときも同じく、新しく仲間になる人たちを小グループに分けて対話する時間を設けました。そのときは不安が少しでも和らぎ、前向きに取り組んでもらえるよう、私自身の想いを語れるだけ語りましたが、地域や事業の異なるみんなの力をひとつにするには、やはり対話が大事ではないでしょうか。
時代に合わせて、人と人をつないでいきたい
理念(目的)をもたず売上のためだけの仕事をすると、お客さまが不在のサービスになってしまいます。それは私たちにとって、感謝や絆がなくなることと同じ。
理念と売上のバランスの取り方は、経営者にとって大きな課題ではありますが、お客さまの目線に立ったマーケットインの発想で価値を提供していける組織作りが私の仕事だと思っています。
冠婚葬祭は、今後もなくてはならない事業です。さまざまな環境変化に対応しながら、時代に合わせた価値を提案していきたいと考えています。
また、「人と人をつなぐ」という観点から、私たちにできる新しい事業展開も検討中です。 時代の変化に合わせた成長を遂げるためには、内側の改革と同時に外から新しい刺激を取り入れることも大切。多様な経験や専門性のある方を迎えることは、企業の成長には欠かせないでしょう。
当社の理念とフィロソフィ、そしてチームワークの大切さに共感できる方にお越しいただき、既成概念をうち破るような新しい発想を吹き込んでほしいと思っています。