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県内NO.1の待遇を。社員の活躍こそ、成長の源泉。

丸仲商事株式会社
代表取締役社長 尾高 猛敏

更新日:2017年8月09日

1960年生まれ。静岡東高校から千葉大学工学部機械工学科を卒業し、1983年に山武ハネウエル株式会社 (現アズビル)に入社。機器事業部にて営業に従事。1990年丸仲化工機株式会社に入社。グループの会社専務取締役および代表取締役を経て、2014年丸仲グループの中核企業である丸仲商事株式会社の代表取締役に就任。現在に至る。
※所属・役職等は取材時点のものとなります。

外資系メーカーでの経験から得たひとつの指針

新卒で入社したのは、制御・計測機器の外資系メーカー。飛行機が好きという理由で、いつかは海外で仕事をしてみたかったからです。外資系企業には、当時の日本では珍しい企業風土がありました。残業をしない、給与が高い、有給を消化する。今でこそ働き方が注目される世の中になりましたが、私は1983年の社会人一年目からそのような環境で仕事をしていました。

新入社員にまで経営状態を公開し、賞与の支給額は経常利益に応じて決定。一人ひとりが経常利益を意識する環境の重要性や、評価に対する納得感と経営の透明性との関係について、実体験を通じて学ぶことができたと思っています。ここでの経験は、私の中で経営者として大切な指針のひとつになっています。

経済危機を乗り越えるたび、より強い会社へ

1990年に当社のグループ企業へ入社後、しばらくは「作れば売れる」時代が続きました。ところが、97年に日本を襲った金融危機で事業環境が一変。生き残るためには、変わらなければいけない。そう強く思ったことを覚えています。

当時、顧客のほとんどが市場に変化があると最初に影響を受けてしまう企業ばかりでした。そこで、まず取り組んだのは、顧客層を変えること。努力を重ねて、徐々に大手企業との取引を増やしていき、取引比率を6割以上にまで引き上げました。

2000年代に入ってからはITバブルの崩壊、さらにリーマンショックもありましたよね。これらの経済危機は無事に乗り越えられましたが、この先いつまた同じような危機が訪れるかは分かりません。そのときに自分にできることは何か。考え抜いた末に出した私の答えは、「変化に耐えられるだけの仕組みを作ること」でした。

そこで着目したのは、ある制御機器メーカーの仕組み。前職時代の競合相手で、当時から経常利益の高さが有名な企業でしたが、創業社長の引退後も継続して成長を続けています。私は、この会社の収益構造や継続的な成長を支えているのは、経営者のカリスマ性や資本力などではなく「仕組み」だと考えたのです。

実際に、給与設定の方法や社員教育、財務体質、事業戦略など、高い利益率を継続的に生み出すことが仕組み化されており、自分が会社の経営に関わる機会があるなら、同じように仕組みを構築しようと心に決めていました。

2つの目標を実現させるために取り組んだ、財務体質の改善

2010年に専務になった際、私は2つの目標を掲げました。1つ目は、静岡の中小企業で一番給料の高い会社にすること。2つ目は、外部評価の高い会社にすることです。

2つの目標を実現するために必要だったのは、財務体質の改善。海外事業の撤退、所有不動産の売却、不採算部門の閉鎖など、将来的に経営のリスクとなりそうな要素をひとつずつ減らし、2016年のグループ会社統合をもって、ようやく理想の形へと整えることができました。私がお手本にした「仕組み」を、自社でも構築できたのです。

おかげで今は、無借金経営。高い企業信用調査の評点目標にも限りなく近づき、自己資本比率を高めることもできました。経営状態は細かい数字まで全社に公開し、賞与は経常利益に応じて支給するため、社員が売上や利益に興味を持つようになってくれたことも良い変化だと感じています。

危機や変化には、必ずチャンスが隠れている

幾度となく市場の変化を体験してきて思うのは、世の中が変わるときこそチャンスだということです。マーケットインの発想で市場の変化を敏感に察知できれば、ニーズに合った製品を開発できるからです。

例えば、今であれば、物流業界に変化の波が起きていますよね。物流はさまざまな分野と関連しているため、私たちの顧客にも影響がでます。ですから、チャンスがきたと思っているんです。

長期的な視点でみると、人口の減少も大きな変化でしょう。この先、さらに少子化が進むと、今以上に製品の多品種少量化が加速するでしょう。そうなると次は、プリント技術が求められる時代がやってくると予想しています。建材へのプリント技術は非常に特殊で、まだ一般的ではないですが、いつでもスイッチできるよう、今から準備を進めています。

成長を続けるニッチトップであるために

当社の技術は、建材の縁や表面にシートやフィルムを貼る「建材化粧」の独自技術です。機械の開発はもちろん、生産ラインにおけるシステム開発なども手がけ、大手住宅設備機器メーカーや小売企業などの設備コスト削減や省人化に貢献しています。

高収益の事業モデルを構築するためにファブレス化して以降、コンサルティングから設計までの上流を手がけることに専念。コア技術が必要な部分を自社で、そうでない部分は他社の力を借りて開発しています。

また、機械に関連する消耗品、専用ソフトウェアなども安定した収益を確保するうえで重要です。主要製品3つのうち、建材の側面に貼る「エッジバンダー」と、表面全体を貼る「ラミネータ」は、競合が輸入製品のみ。

パネルを加工する「ボーリングマシーン」は最後発で市場に参入しましたが、後発の強みを活かして、基幹システムと連動する独自のソフトウェアを開発。約10年かけて大手企業に導入し、今では業界標準のソフトウェアになりました。ボーリングマシーンの分野は、ライバルの数こそ多いものの、高い知名度とシェアを築いています。

今後のキーワードは、海外ローカルと他業界への横展開です。まず、海外ローカルは、海外の現地メーカーに対する販路の拡大。ベトナムやインドネシアなど、東南アジアのローカル企業に向けた生産ラインの提供を考えています。当社単体で機械を売り込むのではなく、建材加工の工程に関わるメーカー数社とともに協業して進めていく予定です。

他業界への横展開は、家具やアルミ以外の業界にも自社技術を活かしていくことです。当社の「貼る」技術を必要としている業界は他にもあり、今後さらに発展させていくことが可能。ここでも協業は大きな力になるため、生産ライン全体で受注していきたいと思っています。

今、もっとも投資したいのは「人材」

どのような会社であっても、会社が運営できるのは人がいるからこそ。特に中小企業では、社員ひとりが会社にとって大きな存在です。

未来を一緒に考えてくれる人材が当社には必要なのです。実際に紹介してくれた方の活躍をみてもそれは明らかで、人材の大切さを改めて感じています。

特に、Uターン転職で入社した方は優秀な印象があります。事業領域は、非常にニッチです。誰もが知る有名企業や市場にいる人にとっては、もしかしたら地味に映るかもしれません。

ただ、ほんの少し発想を変えれば、業界で一番の有名人になることもできる環境です。知識や経験はもちろん大切ですが、自分がやってやるんだという気概のある方にぜひお会いしたいと思っています。

編集後記

チーフコンサルタント
原口 翼

静岡の隠れた優良企業、丸仲商事様は「貼る」機械を主体に、国内・海外の大手建材メーカーを中心に圧倒的なシェアを持つ機械メーカーです。日本ではこの工作機械を作れる会社はなく、専門的な分野に特化し、他が真似できない技術で業績を伸ばしています。

また、その強い技術を生み出すのは人であり、会社の成長に欠かせないのは「社員を大切にする心」だという尾高社長のお話も非常に印象的でした。社員を大切にする社風、圧倒的なシェアを生み出す技術力、強い財務基盤は優良企業そのものだと感じます。

今回の取材では、尾高社長の考え方や人柄のルーツにも触れることができ、経営観、未来へのビジョンから尾高社長の人柄を感じとっていただければ幸いです。

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